コメッセージ No.82
幸い天気はまずまずでしたので視界は良かったのですが、時々地吹雪のようになると一瞬真っ白になります。
これは北海道でも一番寒く、しかも雪の多い幌加内町を走ったときの様子ですが本当に聞きしに勝る雪景色ではありました。
実はこの時、その地でじゃがいもやかぼちゃ、ソバなどを栽培しているM氏を訪ねての旅だったのですが、民家などほぼ雪にすっぽり覆われてどこがなんだかさっぱりわからず、携帯電話で数回連絡をとってやっと仕事場のJAの倉庫に着いたという次第、ひさびさのM氏との再会となりました。
断熱の効いた倉庫で彼は本州送りのじゃがいもの箱詰めを行っていましたが、いたって元気で外の雪に気圧(けお)される風でもなく喜々として働いていました。
それもそのはず、この雪の冷熱を夏の冷房に使ってほとんど通年じゃがいもを販売しているとかで、今では東京、日本橋のデパート高島屋にも自分のブランドで納品しているとのこと、当然kg当たりの単価も相当高くなっているのです。
日本一の寒暖の差と雪の多さを逆手にとって美味しさと供給の安定を実現し、さらに有機栽培、低農薬栽培を早くから実践してきたことが、本物を求める今の時代のニーズとがっちりかみ合った当然の結果かもしれません。
ここに至るまでのM氏の生産、販売、営業努力には本当に脱帽です。周りは農家をやめてゆく人ばかりで過疎化が進んでいますが、ハンディをプラスに変えるやり方、発想の転換でずいぶんと変わるものです。
彼の地と私たちの住む札幌圏とでは人口、交通アクセス、教育医療福祉文化の面、農地価格など、数や規模や利便性ではいったいどれほどの開きがあることか.....。
あまりにも札幌圏の農家の私たちは恵まれすぎていて、その”ぬるま湯”に浸りすぎてはいなかっただろうか?
その後M氏の自宅におじゃまして奥さんを交えての農業談義を楽しんだあと帰宅の途についたのですが、私のほうが何か元気をもらったような気がして「土地ならなんぼでもあるから、高嶋さんもこっちに来ていもやら米やら作らんかい!?」と言った彼の言葉が妙に心地よかったのです。
話は変わってもう一人の方のお話をいたします。アイガモ農法をやっている美唄市のI氏....このほど日本農業賞を初めて夫婦二人で受賞された人ですが、アイガモ水稲会の総会の折り受賞の経緯、内容の評価等について語ってくれました。
これまではどちらかというと大規模経営で他に比較して良品質、多収...で結果的に経営状態も申し分なしというのが主な受賞ポイントだったようですが、I氏の場合は決して規模ではなく、環境に配慮した生産の仕組みを作ったこと、仲間とともに早くから販売組織を立ち上げ一般消費者への直売に取り組んでいたこと、そして結果として地域農業のこれからの方向付けに多大な貢献をなしたこと....であったようです。
本人は謙遜気味に話されておりましたが、「時代が変わってきた....」から私みたいな者が受賞できたとのこと。
しかし確か私よりも3年ぐらい早くアイガモ農法を始めていますし、害虫が寄りつかないように畦にハーブを植える「香りのあぜ道」を発案、実行したり、畝間だけでなく株間の除草もできる新しいタイプの水田除草機を考案して、農薬に頼らないでもすむような農法への道筋をつけてきたことなどはそう簡単にはできることではありません。
前出のM氏、そしてI氏とこうした農業者の方々と知己になりお話を聞けることは、自分にとってとてもありがたいこととつくづく思います。
投稿者:taka-farm