コメッセージ 162号 2009年 11月号
え~と....なになに10月10日より販売開始....いよいよ満を持しての登場か。 皆さんもご覧になったことと思いますが、"ゆめぴりか"の大広告が新聞に載った日の私の率直な感想です。
今年から本格的に作付けされた"ゆめぴりか"ですが、一昨年ぐらいより食味がコシヒカリに匹敵するかもしくはそれ以上という評価で生産者の間でも話題になっていましたし、昨年来よりこれまで数多くの試食会が開かれたようで、その報道のなかでも参加者がコシヒカリ以上の評価を下したとテレビやら新聞が繰り返し言っていました。
北海道米もとうとうこのレベルまできたんだなぁという感慨もあって、この春にはこりゃ私もぜひ作ってみたいものだと思っていたところです。
で、JAに種の申し込みをしたのですがこれがまた極端に少ないわけです。
開発されてまだ間もないため種子の生産が間に合わないということで、ここ北広島市全部で180kgだけの割り当てとのこと、当ファームだけで種籾440kgぐらいは使うわけですからその量たるや知れたものです。
一軒あたりの農家に割り振ると数キログラムにしかなりませんから、面積も実に中途半端になってしまい、苗の管理、田植え、刈り取り収穫、乾燥調整、出荷となにかにつけ面倒なこととなってしまいます。
この段階で一部の農家さんが「そんなめんどうなものならやめるわ」と手を降ろしたのですが、それに加えて一番のネックになったのが以下の条件です。
種を扱っているのはホクレンですが、その曰く「"ゆめぴりか"を作付けした農家は1俵ぐらいは自家消費用として残しても良いが、残りの全量を農協に出荷すること」というものでした。
「でなければ種は販売いたしません」というのです。
あらまぁ....ちと厳しいなぁ....これって家(うち)らみたいな直売農家にとってはほとんど意味のない話になってしまいます。
で、この段階でまた一部の農家が作付けを諦めてしまいました。
農産物で押しも押されもしないブランドを築き上げるのはたいへんな時間と労力を要します。
夕張メロン、川西ながいも、ニセコの男爵、富良野のラベンダー、北見のたまねぎ、十勝の豆........北広島輪厚のダイコン!!.....どれもこれも先人達のたゆまぬ努力の積み重ねで作り上げ維持してきたブランドでした。
ここで「...でした」という表現をしたのは実はこうしたブランドを確立した時点からは実質的な守りの体制(態勢)に入ってしまうのですね。
長い年月いつも後発組からの攻めにさらされるわけですからたいへんなのですが、いつのまにか新興の産地にとって代わられたという話は枚挙にいとまがありません。
え~~っ、もう"ゆめぴりか"無くなったって?
鳴り物入りで売り出したと思ったら一ヶ月も経たないうちに品切れとのことで、あの宣伝費はいったいどうなるの?
お米の生産者は田んぼの面積に応じて負担金を払っており、その中から宣伝費を捻出しているのですから。
そして私は生産した"ゆめぴりか"をJA(ホクレン)に出荷したのですが天候不順な年に厳しい"基準"にパスすることなく、最後は業務用米か何かに混ぜ米として利用されてしまうようです(今年タンパク値6.8%以下をクリアしたのは全体の6%とのこと)。
ブランドが育ち収入増となるのが先か、それを待てず米作りを諦めるのが先か.......あぁ、でもそういえば米の不適作地(と言われる)ここ、北広島に"ゆめぴりか"の種をまわしてもらえる保証などないわけで、そもそもそんなこと考える以前の問題か?
投稿者:taka-farm