コメッセージ273号 2019年2月号
昨年11月、国連は今年を「国際小農年(小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言)」とすることを総会の賛成多数で決めたと言うことが報道されましたが、たぶんほとんどの方はご存知ないだろうと思います。
たしか数年前には「国際家族農業年」ということを唱い世界的には食糧生産のかなりの部分を家族農業=小農が担い多数の命を育み、地域の文化、経済、環境の維持発展に寄与していることを再評価する運動が提唱されたわけですが、再び言葉は違っても極限まで効率化され利潤追求する大規模農業やグローバルな穀物メジャーとは対極をなす「小農」をもっと大切にしてその生み出す価値を認め、高めようという運動が再提起されたわけです。
これはボリビアが中心となって提案し賛成119カ国、反対7、棄権49ということで採択されたとのことですがアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどが反対、日本は棄権だったようです。
農産物輸出強国の反対は仕方ないにしても日本の棄権は一方でTPP、EPAなどの貿易協定を主導しておきながら自由化に反するような宣言には賛成できないという選択だったのかもしれませんが、核兵器廃絶の宣言採択時と同じく棄権ということで、残念ながらやっぱり世界のオピニオンリーダーにはなれないのですね。
日本は農業面では地方、地域で頑張る「小農」の国家にまちがいないはずなんだけども....。
ところで阿部寛主演の人気ドラマ「下町ロケット」が放送されてましたが観ましたか?
時代の最先端を行く人工知能(AI)、高度情報通信技術(IoT)を駆使して無人のトラクターやコンバインを操作する話ですが、雨の中での稲刈りは論外としても3K(汚い、危険、きつい)は遠い昔の話で現実はややドラマに近いレベルにまで到達しているのです。
人手不足解消、栽培技術のデータ化によるコスト削減、伝承、規模拡大.....そこには外国農業と競争する日本農業の行く末を暗示してるかの感がありますが、でもそうした技術を効率よく最大限に発揮できる条件の整った農地がどれほど整備されているでしょうか
我々の技術が日本農業を救う.....主役は熱く語りますが、救われそうなのは平らで広々としたごく一部の地域にある超大農か大都市近郊の超集約小農に限られそうではあります。
最近「日本が売られる」という本を読んだのですが、自由なグローバル経済が豊かな未来につながると言われる裏で起きているとんでもないこと、あるいは起こる事が予想される不都合な事柄がいっぱい記されていました。
外国との物、サービスなど商取引のことゆえ無秩序では困るわけで、これまでそこには一種の防波堤の役目を果たす種々の法律が機能していたのですが、ここ数年十分な審議がなされないまま国会で数々の撤廃や改正がなされてしまいました。
水道法、農地法、種子法などの改正、食糧や農薬の残留基準緩和、遺伝子組み換え表示の実質的な撤廃等々.......どうみても納得のいかないことばかりなのですが、昨年のモリカケ騒動国会の間に粛々?とあれよあれよと可決されてしまったということです。
反対反対でなかなか物事が決められない政治も問題ですが、国民の生命、健康に直結する案件についてはやはりことさら、慎重に進めてほしいものです。
国連が再評価し認めようとする小農ですが、我が日本では影が薄くなる一方ですね。
投稿者:taka-farm