コメッセージ305号 2021年10月号
今年の稲刈りはかつてないほど早く9月3日に始まり、そしてかつてないほど早く22日に無事終了いたしました......春からの概ね温暖な気候と今夏の異常な高温少雨がお米作りには幸いして昨年に続いての豊作になったわけですが、米作りを主体とする我が農場では3月から7ヶ月あまりに渡った農作業への天からのご褒美とも言える結果にまずは満足しホッとているところです......でもこれもたぶん地球温暖化の影響が年々強まっている証拠でしょう。
しかしながら皆様ご存知のことと思いますが、このコロナ禍でレストラン、居酒屋など外食、飲食産業向け、旅館ホテルなどの観光旅行宿泊業向けなどのお米の需要はガタ減りで少子高齢化、人口減少による自然減も加わって相当数の米が在庫として売れ残ってしまっているようです。
結局、それらが足を引っ張って今年度(令和3年)産米の価格が下がっているわけですが、昨年の同時期よりも概算払いで2,000円/玄米60kg近く落ち込んでいるとのこと。
これが20,000円の2,000円ならまだいいのですが、12,000~13,000円のうちの2,000円だから事はたいへんです。
概算払いというのは大方の農家がJAに出荷するなかでその年の生産量、需要量をある程度予想してまずJAが仮の単価を設定し農家に支払う金額のことで、そうしてお米を集めておいて翌年のお米が穫れるまでその都度時価で販売していき、最後に売った全体の金額を公平に生産者の出荷した割合に応じて差額分を分配して本精算を行うことで最終的な収益が確定するわけです。
今後も販売環境が改善されずいくらかでも差益が出なければ概算払いがイコール本精算ということになりかねませんが、ここにきて主食米作りを見限る農家がかなり出てきそうではあります。
ところでこのところの感染者急減に伴いコロナ緊急事態宣言が解除されました。
が、これですぐに以前の日常に戻れるかといえばとてもとてもそうなるとは思えません。
専門家達も慎重な姿勢を見せていますし、一般市民もこれまでの一年半以上に及ぶwith(ウイズ)コロナ生活が身に染みこんで疑心暗鬼状態が相当続くような感があります。
ワクチン接種では先進国でも一番遅れをとっていたのが、ここにきて欧米諸国を追い抜くところまでやってきたという明るい材料も見受けられますが、何せ政府は出した緊急事態宣言を解除したとたんリバウンドが起こり再び発令ということを何度繰り返したことか.......。
結局、管総理はコロナに翻弄され続けた首相として国民に記憶され、評価定まらぬままのオリパラ強行開催以外特筆すべき業績もないまま1年ほどで辞めることになりました。
そして自民党の新総裁に岸田氏が決まり同時に次の内閣総理大臣になって日本の舵取りをしていくことになるようですが、総裁選立候補のときにしきりに言っていた格差の是正を行きすぎた新自由主義型の経済から再配分を重視することによって行っていく≒アンチアベノミクス......ということ、これは是非ともやっていただきたいものです。
先だってお亡くなりになった経済評論家で私が最もその主張に得心していた内橋克人氏は「人が人らしく生きるのが経済だ」と言っていますが、シンプルに米農家が豊作を心底率直に喜ぶことのできる、そんな地方の地力(じりき)、活力があふれた日本再興に挑んで欲しいものです。
投稿者:taka-farm