コメッセージ330号 2023年11月号
やっぱりそうなってしまったかぁ...........先月の329号で杞憂であればいいのだがと書いたことが現実となってしまったようです。
とにかく今年の夏は無茶苦茶暑すぎて全国的にお米の品質が低下してしまい、外観の検査で落等するものがとても多くなってしまいました。
米粒に高温障害で白濁が目立ち透明感がなく、害虫の被害も多く発生したのが原因のようです。
ちなみに検査では水分の外に70%以上正粒(米粒が正常に生育し、被害を受けていないもの)があれば1等米なのですが、皆様はこの数字を高いか低いかどのように感じられるでしょうか?
お米の検査は検査官が検体(玄米)を皿にとって目視で調べた昔とは違って、今では大方の所で器械を導入し検体を投入すると自動的に数秒で結果を表示するようになっています。
その項目を見るとまず6つの大項目(整粒、未熟粒、被害粒、死米、着色粒、もみ)があって、それぞれ正粒には2つ、未熟粒には9つ、被害粒には8つ、死米には2つ、着色粒には3つの細目が設定され全体で1000粒ほどのうち何がいくつ、何がいくつと粒数と%で表示されます。
デジタル機器だから一瞬のうちにこれだけの分析がされるわけですが、そこには人の感覚的なものは入る余地が無く検査官が代われば見方が変わるみたいな曖昧な所が払拭されて公平といえば公平、ある意味問答無用の公明正大な検査がなされるわけです。
今年は前述のように白濁や虫害が多く地方によってバラつきはあるものの、例年8割以上はあるはずの1等米がここに来て半分にも満たない結果になっているようで米作り農家にとっては豊作にはほど遠い芳しくない状況になってしまいました。
先日もTVのニュースで農家の人が収量は同じでも落等で昨年より700万円からの減収になると嘆いていましたが、食味はさほど変わらないのにこんな細かな検査の結果に翻弄されるのはどうにかならないものかと思います。
スーパーで売られているお米はそこそこの価格のものであればとてもきれいで、粒も揃い味もまあまあなわけですが裏では生産段階でこれほどの選別、格付けがなされているわけです。
1等米にならなければお金にならないわけですから農家もせめて天候以外の自分で対処できる除草、病虫害の防除のための農薬はやらないにこしたことはないですが使わざるを得ないのです。
今、世界では10億人ぐらいの人が満足に食べられず飢えに苦しんでいるといいます。
そんな中でウクライナでは戦争が続き穀物も減産していますし、にわかに勃発したパレスチナの紛争は世界の分断をさらに進め飢餓線上をさまよう人々を益々増やし続けています。
混迷の深まる世界情勢は食料や、燃料、電気代、生産資材などの価格上昇を招きさらに為替相場が円安(1ドル150円)状態で輸入品の高騰に拍車をかけています。
昔、アメリカに次いで世界2位の経済大国になった頃は飛ぶ鳥をも落とす勢いだった日本もGDPで10年ほど前には中国に抜かれ、そして今またドイツにも抜かれそうとのことです。
経済規模が国力のバロメーターと見るならばこれからもずっと今までのように世界中から食べ物を金に飽かせて買い漁るなんてことはできないし、現に食料を他国に買い負けるようなことが頻繁に起こるようになりました。
さてうちでは稲刈りの合間にお米の検査を受けながら一部は出荷し残りは販売用にするのですが、冒頭に述べたように落等するのではと心配だったものの数字を見ると粒厚1.9mm以上の整粒が75%とあってなんとかセーフで1等米にランク付けされました。
これまで新米を食べられた方々の感想を聞くと、とても美味しいよと言われ安堵したところですが、あまりに細かい判定の基準は何のためなんだろうと思ってしまいます。 日本では自給率が低い中、農産物は1、2、3等、特A、A、A’、B、2L、L、LM、M、S、2S、秀、優、良、....などとあまりに細かすぎるランク分けがされているのですが、生産現場での食品ロスは加工、流通、販売、消費全体合わせても相当な部分を占めているに違いありません。
投稿者:高嶋浩一