コメッセージ348号 2025年5月号
「父さん、俺、明日からちょっと2日ほどいないからぁ~....あと頼むわ」と息子。
「あぁ~、何だ.....どうしたのよ?」と私が聞き返すと「ちょっと東京に行って来る......」との答え.....えっ!何かあったかと再び問えば、どうやら東京で米作り農家を中心にしたトラクターデモ行進があってそれに参加するとのこと、本人も昨年来の米騒動に巻き込まれてなにがしかの行動を起こしたかったのかもしれませんし、デモの様子を見たかったのかも知れません。
3月30日行われた令和の百姓一揆と銘打ったそのデモの企画は私もネットのニュースなどで主旨や目的には賛同していましたが、まさか息子が行くとは思ってもいませんでしたのでいささか驚きの気持ちを持ったのですが、全くの個人の意思で旅費も全て自己負担して行くというので、その能動的な行動力には正直オヤジとしても応援したくなりました。
かく言う私も実は平成の米騒動(1993年)の翌年2月に行われた東京での米の輸入自由化反対デモに参加しているのですが、この時は私の所属していたJA青年部の一員としての参加で旅費はすべてJAが負担してくれて言わば組織を挙げての動員に乗っかった形でした。
ツナギ服の背に”いつまでできる世界の食糧買い漁り”と書いたのを着たり、当時の政治、世相を“平成ええじゃないか音頭”という名前で替え歌にしたこと、全国の青年部員達と輸入自由化反対のシュプレヒコールを繰り返し叫んだことなどを思い出します。
時は細川護煕首相時代で九州から北海道までJAの総力を挙げての反対運動でしたが、結果的には現在のミニマムアクセス米を受け入れるという形で落着して今に至っています。
しかし奇しくも30余年の時を跨ぎ時代背景も違う中で平成にはオヤジ、令和には息子と同じ東京で米騒動がらみのデモに参加するとは....内容に違いはあれど日々真面目?に米作りに取り組む親子、どこか似たところがあっての行動と暖かく受け止めていただければ幸いです。
ところで後手後手農水省もなりふり構わず備蓄米をどんどん放出して何とか価格を押さえ込もうと必死の体ですが、下がるどころか少しずつ上がったりしてさっぱり落ち着きません。
毎日コメに関しての話題がテレビ、新聞、ネット上に上がり百家争鳴の様相を呈していますが、
私もこのことについて実際にお米を生産している農家として、30数年にわたる直売の経験からの販売者として、国民、一般市民からの視点といろいろこの紙面上で申し上げてきました。
皆さんに「食」と「農」を考える上でいくらかの材料を提供できたのではと思っていますが、かく言う私もうまく解決するには何をどうしたらいい..........とかの具体的な提案があるわけでもありません。
今回のデモの呼びかけ人代表は山形県の農家の人で養鶏と稲作を営む75才というから私より4つも年上の方なんですが、多くの賛同者で実行委員会を作りクラウドファンディングで資金も2000万円ほど集まったそうで、当日は東京で4000人ぐらいのデモ参加者があったようです。 彼のこうした行動力には心底からの脱帽、そして敬意を持つわけですが、ここで翻ってあーだこーだ....あーでもない、こうでもないと見聞きした情報、体験を右から左に流すだけでそれで事足れりとしている71才の自分をこれでいいんだろかなぁ?と思ってしまいます。
投稿者:高嶋浩一