コメッセージ323号 2023年4月号
昨年暮れ、日本ハムファイターズのドーム球場『エスコンフィールド』が完成し、とうとう先月30日より今年の公式戦も始まっていよいよペナントレースの幕開けとなりました。
テレビでも先月から「世界でまだ誰も見たことのない球場」とのキャッチフレーズで連日放送されており嫌が上でも期待が高まり、時はまさにWBCの優勝の余韻もある中で今年の新庄ファイターズの戦いぶり、球場内の飲食店やグッズショップ、周辺のエンタメ施設がとても楽しみです。
で、そうした祝い事、楽しみ事に華を添えるように3月23日から四合瓶でたったの911本、『2023』という名で今年だけの超限定で造った赤毛のお酒(日本酒)が販売されました。
これは貴醸酒という一般の日本酒とは製造工程が異なるもので、19年産赤毛を仕込んだものに20年産赤毛の半分も使って仕込み、実に足かけ3年近く寝かして熟成させたお酒なのです。
恐らく最初で最後のお酒になるはずで3月23日の北海道新聞北広島版、北広島商工会ウエブサイト、弊社HP内のコメッセージ306号にも載っていますのでご覧下さい。
それまで2017,18,19年と3年間に渡って赤毛原料の日本酒『久蔵翁』を製造、販売し徐々に知名度も上がって、まさにさぁこれからという段になって更新のため農業試験場から取り寄せた種の性質の違い(同じ赤毛でも10余種の種を試験場で保存していたことが後ほど判明)から仕込み中の2019年産赤毛では満足に日本酒を製造できないことが解った次第です。
というわけで宙に浮いてしまった製造中の久蔵翁をどうするかという緊急の対応でひねり出されたのが、当初から製造を受託していただいた田中酒造による上記の貴醸酒で、数年の時を要するものの良い物が出来るかも知れないということで、捨てるよりはその可能性にかけたのです。
そのようなわけで結局2020年の販売は一切なしのやむなきにいたりました。
その後も種子確保の問題は後を引きずり21年も販売はできなかったのですが、新たに焼酎ならできそうだということになり22年『1873』のブランド名で赤毛の焼酎をを製造、販売することができました(ちなみに西暦1873年は久蔵翁が赤毛栽培に成功した年)。
この焼酎もなかなかの出来栄えで評価も上々、原料「赤毛」の生産に携わっている者としてこの上ない喜びとなり米作りへのモチベーションもより一層高まりました。
そして今年、ホント!!に奇跡とも思えるような高評価の貴醸酒『2023』ができ、焼酎『1873』と合わせて冒頭のエスコンフィールド開業に間に合ったことはなんという巡り合わせでしょう。
WBCでは栗山監督以下、最後まで決して諦めないという選手一丸となった戦いが繰り広げられ、最終試合で優勝という形となって日本中に感動と挑戦する勇気を与えてくれました。
今回の『2023』、『1873』の製造裏話は北広島商工会や田中酒造、そして原料生産者の私どもがそれぞれのパートでともすれば挫折しかねない難局、試練の中であらん限りの知恵や行動力、技量を発揮して一つのチームワークで作り上げられたものと思っています。
どこかがくじけたり諦めたらこの物語はなかったでしょう。 この2月には道の「優良道産加工品」として『1873』が「北のハイグレード食品」にも選定され、幾多の困難を乗り越えた先の景色ほどまぶしく、喜ばしく、尊いものはありません。
投稿者:高嶋浩一