コメッセージ No.64(2001年9月号)
6月23日、96羽田に放してすぐに1羽死んでしまったから、全員無事帰還とい うことだね。
先月2日にアイガモを田から引き上げましたが、やや一月半近くに及んだ田での生活の中で1羽の事故死のみで済んだことで、まずまずの結果となってホッと しているところです。
今は陸地で肥育中で11月半ばまでパンくず、くず米、野菜クズなどを与えて肉に仕上げます。広い場所での放し飼い(いわば地鶏か...)ですのでアイガモ君達も生き生きしています。わき水による小さな池もあって好きなときに水浴びも出来ます。ストレスがたまらない中で、食べるだけ食べて、日差しを避けて木陰で涼んで一休みという毎日ですからきっと良い肉に仕上がるでしょう。例年のようにアイガモ肉1羽あたり2,200円で販売いたしますので、ご希望の方 はお申し出ください。
リーンリーン....今、我が家ではお米のお客様にいただいたスズムシが鳴いています。本当に素晴らしい音色で、羽をすり合わせただけであんなに美しい音が出せる....とは。「秋の夜長を鳴き通す....」とは唱歌虫の声の一 節ですが、まさにそのおり暗くなってから朝までほとんど夜なか中鳴いて、なご りおしい夏の一夜の夢でも追い続けているのだろうか。
それにしても今年の8月の天気にはいささか驚きを禁じ得ません。正に真夏の悪夢といったところでしょう。先のコメッセージで8月10日頃にはほぼ出穂揃いになるだろうと書いたのですが、初旬の超低温の影響をもろに受けて、穂はいくらかでていたけれどもさっぱり穂先が下がってこない。すわっ!!これは不稔 多発か??、穂をたんねんに調べても確かにカラッポである。
ここで平成5年以来の冷害が頭をよぎる.....お客様の顔が目に浮かぶ。あぁこのあんばいでは半作もとれないだろう....どうやって説明すればいいのか。そんな不安の日々が10日ほども続いたのだが、お盆前ころから好天が続いたあと穂が垂れ始めて実が入ってきたではないか。心配は一日ごとに安堵に変わっていった。このぶんだと平年作ぐらいまで届くかもしれない。
それにしても異常気象の中で実に稲の生態はすばらしい!あれほどの寒さ(外で仕事をしていて鼻水が出てくるぐらい)に当たりながらじっと我慢をしていて 、暖かくなって授粉可能を判断しての開花.....としか思えない。天気の良し悪しの中をいたずらに右往左往して嘆息している人間をしりめに、必死に結実しようとする「本能?」のなせるわざとでも言おうか。そしてそんな中、さても 人間は「青刈り」をするという....なんという矛盾...。どこか大きな自 然の摂理に反したことを人間はしているのではないか。実ろうとする稲の「性( さが)」と収穫の喜びを放棄せざるをえない農家の「心」は「経済」という人知の枠のなかでもがき苦しんでいる。
話は変わりますがこの時期になるとそろそろ新米はいつになるのかとの問いが寄せられてきます。前述のようなこともあり稲刈りは当初の予想よりも大幅に遅れ、今後の天気にもよりますが20日頃から本格的に始まると思われます。私は田植えなど他の農家よりも遅く始まって遅く終わっておりますからなおさら遅くなるわけですけれども、耕作面積の多い分だけ、そして在庫はなくなったが一番登熟の遅れているアイガモ農法米など取り急ぎ刈り取ってしまわなければなりませんからより急がなくてはなりません。
ですからここでまた一つ矛盾を抱え込むことになります。なるべく刈り取りを 遅くして収量を確保するのと、在庫切れの期間を少しでも短くするために収穫をできるだけ早める.....ぎりぎりのところで稲刈りスタートの判断をします。皆さんにはどうかそこのところを理解していただき、アイガモ農法米がもし切れたときには低農薬ほしのゆめ、もしくはきららで一時つないでいただけたら助かります。
それとゆきひかりについては在庫が十分ありますから供給に支障をきたすことはありませんが、ただ今年産の作柄がいまひとつパッとしないので、昨年産米がなくなるまで新米の供給を控えたく思いますので宜しくお願いいたします。
今月は稲刈りの段取りとスタート、スイートコーン、かぼちゃ、じゃがいもの収穫、販売と一年でも最も忙しい月となります。ゆっくり収穫の喜びに浸ることもできないでしょうが、でも食卓の上にほくほくのかぼちゃ、じゃがいもの塩煮 、黄色つぶつぶの甘ーいとうきび、真っ赤に熟れたトマト、きゅうりの酢の物、 浅漬け、焼きなす、そしてぷっくりと実の入ったえだまめ....これらとスズ ムシの音色、片手にビールの入ったグラス....があればそれは至福のひとと き.....なのです。
誰々ちゃんの友達と誰がつき合っているとかいないとか、タレントの誰がどうしたとか、子供達のにぎやかな会話にいささか距離をおきつつ、というよりも微 妙な父親との距離を保たれつつ夕食が進みます。妻と缶ビール一本を分け合って さしつさされつ飲みながら明日は天気だったらあれをしよう、雨だったらこれを しよう....と話します。...が、翌日そのとおりにはめったにならないんですよね、これが。
投稿者:taka-farm