コメッセージ 118号
この期間、春・夏・秋と農作業で忙しくてできなかった(というよりやらなかった)簿記のパソコン入力や種々の勉強会、研修などであっという間に過ぎてしまいました。
例年のごとく結局はゆっくり骨休めもできないまま春耕期に突入しそうです。
しかし今冬期、とても私にとって大切な、それこそ是非一度お会いしたいと思っていた方に会うことができました。
佐藤初女(さとうはつめ)さんとおっしゃって齢80を過ぎて高齢ではありますが、青森県岩木山麓の大自然のうち懐で"森のイスキア"という心を病んでいる人々を受け入れる施設を設けてその救済にあたっている方です。
初女さんを知ったのは10年ほど前に地球交響曲(ガイアシンフォニー)という映画を観たときで、その映画の4人の主人公のひとり(外は外国人)として写っていたのでした。
日本にもこんな素敵な人がいたのかと本当に感動したものです。
初女さんは問題を抱えて訪ねて来る人を無条件に受け入れてくれます。
でも、なにかカウンセリングを行うとか宗教的な話をするとかでなく、そこにあるお米でごはん、おにぎり、季節の野菜やら山菜で質素な総菜、おつけものなど心を込めて作り来訪者にふるまうのです。
円いちゃぶ台を囲んでみんなで食べるのですが、心を病み、閉ざして死をも考えてきたような人が決して豪華でもなく、グルメでもないけれども暖かく心のこもった"たべもの"をいただくうちに・・・・生き抜こう!という気持ちに変わっていくのです。
"食べる"っていうことは本来こうなんだ・・・・ということを、言葉でもなく、理屈でもなく"からだ"と"こころ"で教えてくれています。
あるものをあるがままにいただく・・・・ということが忘れ去られている現代にあって初女さんのこの生き方はどれほど心に安寧と救いをもたらしてくれることでしょう。
まさにこの初女さんに2月、札幌で開かれた「食と農わくわくねっとわーく北海道」主催のおむすび懇談会で会うことがかなったのです。 そして事務局のはからいでおにぎりに使うお米を提供させていただくということにもなって、自分の作ったお米を初女さんがにぎってくれるということを考えただけでも米づくり冥利につきるというか心底うれしくて嬉しくて・・・・・。
会場は食に関心のある方々(午前と午後の2回で定員100名ほど)でいっぱいで、私は午後の部に参加させていただきました。
おにぎりの出来具合が心配だったのですが、初女さんの曰く「しっかりとしたお米でとても良くできますよ」という評価をいただいて前述の嬉しさも倍に膨れあがったしだい。
いよいよ各テーブルみんなでおにぎりをにぎって、初女さんの作ったニンジンの白和え、漬け物などでいただきます。
手前味噌といわれればそれまでだけど、でも本当にうまかった!!
参加者のみなさまの評価も一様にとても美味しい・・・・ということで俺は米を作りつづけてきて本当に良かったなぁとさらに「嬉しさ」の3乗!!! それからお米の生産者ということでお話の機会をいただけたこともありがたく、自分にとってこの一日は明日へのどれほどの"肥やし"になったかわかりません。
最近「食育」についてずいぶんあちこち賑やかで、それはそれでいいことだとは思うけれども初女さんのふわ~とやさしく包み込むようなもの言いと30年以上も続く誰彼わけへだてない「食」によるおもてなし、そして凛とした暮らし方に思いを馳せるとき、その「食育」という言葉自体がなんだか軽く感じられるのですが、みなさまどう思われますか。
投稿者:taka-farm