コメッセージ 131号 2007年04月号
例年3月末から4月初めごろになると北のシベリアへ渡る途中に羽を休め、田に落ちている籾を餌にして数日間留まっているのです。
ざっと見ても100羽以上はいるでしょうか、雪が融けて水がたまり黒い地面が出たところに長い首を下げてピチャ、ピチャ、ピチャ.......と地面すれすれにクチバシをやや水平にして前に進みます。
どうもクチバシがスプーンみたいになっていて水と泥と落籾をいっしょに取り込み、泥水だけを脇から捨てて籾だけを食べているようです。
こうして改めてこの地域を見直してみると白鳥などの渡り鳥やアオサギ、キジ、カモ、アカゲラ、トンビ、ヒバリ、カラス、スズメ等の鳥類、キツネ、イタチ、モグラ、ノネズミ、エゾシカなどの哺乳類、ドジョウ、フナ、タニシ、カラスガイ、ミズスマシ、ゲンゴロウ、トンボ、アメンボ、セミ、カエルなどの水生動物、昆虫類などが見られ自然の環境としては豊とは言えないまでもそこそこのものは見受けられると思います。
ただ農業地帯としての視点で見るとこれがかなり問題で、あちらこちらかつてはきれいな田んぼ、畑だったところが今では捨て地となり荒れ果てているところ(野生動物の住みかとしては最高)が結構見られるようになってきました。
私の住む北広島というところは道央圏の大都市札幌のとなりということで、大規模な住宅団地や工業団地の造成、商業施設の進出、道路建設などの公共事業などが続いてそのたびに地主だった農家にそこそこのお金が転がり込んできました。
また、適度な仕事も身近にあったわけで手軽な現金収入に甘んじてきたことも事実です。
結局今となってみれば転作制度が10、20、30年と続くなかでそれらが仇(あだ)となってそのうち自分のところも農地が売れるだろうというもくろみで自発的な農業生産の拡大、効率化、新作物や技術への挑戦.....などをおろそかにしてきてしまったつけが回ってきたということでしょうか。
結果、後継者は育つはずもなく少しづつ着実に荒廃農地が増えてきているのです。
もちろんこういう状況に立ち至ったことが当地北広島ばかりでなく日本全国の農山村部でごく当たり前に見られるようになってきたことは、ある意味これまでの農業政策の失敗の部分が相当に大きいということを如実に示しているとも言えます。
で、こうした農山村部の荒廃を食い止めんとしてか、農水省では今年度から農地や水、環境の保全と向上を目指して補助金を出すから農家、非農家を問わず地域ぐるみで取り組みなさいという政策を打ち出してきました。
一方で担い手や大規模農家に集約的に補助をしつつ高齢もしくは中小農家を生産性の面からどんどん切り捨てる政策も戦後農政の大転換と称して今年度から始めることになっています。
小さな農林業では暮らせない....効率の劣る者は地域から去らなければならないようにしつつ、老若男女、一部は都市住民をも巻き込んで地域ぐるみで環境をきれいに.... 美しい日本を創造(再生)するために頑張りなさいという....?....なんか矛盾してはいないかと思う。
そもそも補助金がつくからきれいにするか....ではなく小さくとも多様で個性的農林業者がたくさん育てばそういう人々を核として心豊かな地域は自ずと築かれる!?
こんなこと考えつつデジカメで白鳥の写真を撮っていると、警戒してか何羽かが頭を上げてこちらを見ています。
何かその目は「あなたがた人間が来る前、もともとここは湿地帯で私たちの絶好の餌場だったのだからね」とでも言っているようで、こざかしい損得勘定で環境を云々している心が見透かされているような気がします。
投稿者:taka-farm