コメッセージ 132号 2007年05月号
狭いトラクターのキャビン(運転席)に二人で乗り込み息子に運転させて、私はいろいろな操作を教えます。
早い話が運転免許の教習の農作業版とでもいいましょうか、畑の中を行ったり来たり7~8回も繰り返せば慣れてきて、これ以上横でガミガミ注意するよりもあとはまかせてもいいだろうと判断した段階で「俺は苗のハウス見にいくからあとは頼んだぞ」と、さっさとトラクターから降りて300mほど離れたハウスに歩いて向かいます。 ただ、そうは思ってもやはり気になります。
なにせ息子にとっては実質初めてのトラクターの農作業運転ですから・・・・。
で、気になってしようがないので道すがら何度も振り返っては畑の中を動いているのを確認しつつ帰ります。
息子は今年から農業の大学に進学し、たまたま休みのこの日に手伝ってもらったというか、そろそろ農作業の手ほどきもしておいたほうがいいかなという思いもあって声をかけたのですが、本人もその意識が頭の隅に少しずつ芽生えてきているようで、あまり嫌がる様子もなく従ってくれました。
今のところ5月病の気配を感じさせることなく毎日通学し、大学が休みのときには多少の手伝いをしつつ・・・・もっとも多少の"こづかい稼ぎ"....という部分も大きいようですが、そんなスタートを切った息子を見ていると、どうしても私の学生時代とオーバーラップしてしまいます。
今、思い返しても学生時代の4年間は他の何にも代え難い日々だったと思えるだけに、息子にも後日、そうした感慨の持てるような学生生活を送って欲しいと思う。
そんな思いを胸に育苗ハウスに着くなり家内が「ちょっと、ポンプのエンジンのガソリンがないよ!Bのハウスの灌水パイプから水漏れしてるよ!Fのハウスの真ん中あたりの苗がちょっとおかしいみたいだから見てよ!それとDのハウスの後ろの方のハウスバンドが切れてるから新しいのにしておいて!・・・・・」いやっいやっいやっ、まぁ言われるは言われるは、次から次から言われっぱなしでその処理に追われっぱなし(汗)。
指示する方から指図される側に180度代わって、まさに立場は逆転です。
しかしこれも家内がハウス管理の責任を持ってやっているだけに、こと細かいことまでキチッと目が行き届いているということの証左だと思えばむしろ当然のことで、かえってありがたくも思えてきます。
・・・・もっともたまにはハウスの中でケンカごしにもなることもありますが。
5月はいっぺんにいろんな花が咲いて、一斉に木々が芽吹き一年で一番エネルギーにあふれた月かも知れない。
そして一日一日、日が長くなっていることが実感できる月でもあります。
つまり今日よりも明日を確実に希望を持って迎えられる月とでもいいましょうか・・・・この感覚は農家であればなおさら強く持つはずです。 まさに"種"をまき"苗"を育てる農家であればこそ・・・・でしょう。
でもこの感覚も発光ダイオード(人工照明)利用の最先端野菜生産工場の登場やエネルギー大量消費農業と無分別な海外大量輸入農畜産物とによって失われた"旬"と目を覆うばかりの"大量廃棄"が相当に危うくしています。
息子の時代、農業はどの方向を向いているのだろうか・・・・ただ望むべきは"種をまくときのそこかしこの息吹"をも感じることのできる農家になって欲しいのですが。
投稿者:taka-farm