コメッセージ 154号 2009年 03月号
この頃になると昨年、一昨年、そのまた前年と作業日記や作付計画の図面などを見てはあれこれと思案することが多くなります。
野菜などは昨年の売れ筋や生育のでき、不出来ですでに作付けを決めてある品目、品種の種や資材などの発注をして、いつどこに何を植えるかいよいよ確定しなければなりません。
しかしお米は今年作付けする分の種はすでに昨年2月のうちに頼んであるので、それを大きく変えることはできません。
これがちょっと難しいところで昨年できが悪かったから今年はこの品種をやめようとか、この品種は売れゆきが好調だから倍の面積を作ろう・・・・といったことはなかなかできないのです。
現在、野菜はハイブリッド種がほとんどで種をとって自家種(じかだね)としての使用は品質の劣化を招く危険がありますのでできないのですが、お米の場合は一、二年ぐらいならば大丈夫で、20年ほど前までは経費節減の意味もあって前年の籾を翌年の大部分の種として使用していたぐらいです。
もちろん自家種ですから当時は種子消毒は化学農薬でしっかりやっていたわけですが、今のように種子消毒を温湯や食酢でするようになってからはすべて採取圃場産のできるだけ新しく病気に冒されていない購入種子を使うことがあたりまえになってしまいました。
それとお米の場合、粒が小さく色、形がほとんど変わりませんので異品種が混入してもわかりませんから自家種は取らずにきちっと管理された採取圃場産の種、つまりJAの種を使うことがほぼ義務化されているといってもいいでしょう。
お米の種は、しかも採取圃場産の種はJA以外から手に入れることは極めて難しくなっているのです。
ずいぶん前になりますがNHKの食糧に関する番組で"種を制するものは食を制する"と、穀物メジャーの戦略を伝えていましたが、日本国内では米は圧倒的にJAが押さえていると言えるのです。
ところで、「おぼろづき」に続いてまたまた今秋から期待の新品種「ゆめぴりか」が登場することになりました。
もちろん私も種子を手に入れ作付けの予定ですので皆さん楽しみにしていて下さい・・・・と言いたいところなのですが、実は皆さんに販売することができないのです。
種の供給がまだまだ少ないため、私のところにまわってくるのが本当に少量なこともありますが、もう一つの大きな理由は生産された「ゆめぴりか」を自家消費用の1俵(60kg)を除いて全量JAに出荷することとなっているからなのです。
その条件を受け入れる農家だけに種を供給するらしいのですが、これっていいの?って思ってしまいます。
うちのお米を買っていらっしゃる方は一年を通して食味はほぼ安定しているはずですが、スーパーなどで買っている人の話を聞くとかなり食味、品質にムラがあると聞きます。
その多くの原因のうちの一つが異品種の混入にあるとされているのですが、これがどこでどうして(うっかりなのか故意なのか)起こるのかが問題なのです。(国の検査基準では確か4%程度の混入までは認められているはずです)
最近の「偽装」ということであれば流通のなかのどこかでしょうが、JAのライスセンターで精米、包装されたもの中にも希に見うけられると聞くにいたっては、それって農家が異品種を持ち込んでいるってこと!?・・それが故意でなく何かのミスだとしても"うっかり偽装"には違いないわけで、コスト削減で個別検査をやめて責任の所在が曖昧なダンプやコンテナでの籾バラ受け入れに走ったツケが出ているとしか言いようがないですね。
同じ生産者として実に情けないかぎりですが、JAもなりふりかまわず生産管理、出荷統制したくなる気持ちもわかるような気がします。
投稿者:taka-farm