コメッセージ 178号 2011年 03月号
はぁ~っ....と思わず口ごもりもぞもぞと答えますが、「それは一番悪い答えだね」と、これまたいきなり厳しいコメント。
これは昨夏からコメッセージ176号(新年号)の抱負に"農場理念"のことを書いたように、農家仲間数人と中小企業の経営者何人かが度々集まって、農場指針作成プロジェクトを立ち上げこれまで8回ほど勉強会を開いてきた時のとっぱじめのできごとでした。
『何のために農場を経営しているのか』という実にシンプルな質問に
「えっ!...」っと
絶句してしまい、これは天命ではないか、すなわち農家に生まれて父母の姿を見ているうちただ何となく、気がついたらこの道を選んでいたみたいなことで答えたのです。
あとは取ってつけたように、自分の性(しょう)に合っているとか、収穫の喜びとかそんなことを並び立てていました。
他の農家のみんなも似たようなもので、お金を儲けて楽な生活をしたいとか家族のためとかいうのはまだ具体的でいい方で、農業の楽しさを見つけるため、生き甲斐のためとかあげくの果てには誰かに農場を譲って楽しくリタイアするためなんてのもあって、改めて突っ込んで考えてみると実に奥が深く、文章にして自分が納得し他に説明できるようにするには本当に難しい。
これは序章にすぎないわけで、『大切にしている価値観、人生観』『農場経営パートナー(家族・社員など)に対する基本姿勢』『大切にしている農業観』『我が農場の固有の役割は何か』『顧客、取引先、仕入先に対する基本姿勢』『地域社会や環境に対する基本姿勢』などいくつかのカテゴリーにわけてそれぞれ自分の農場の考えを自分の言葉で落とし込むべく話し合い(批評、批判、指摘)の場を重ねたのです。
ところでこの頃TPP(環太平洋経済連携協定)の話しがずいぶん話題にのぼっています。
農業諸団体だけでなく北海道は道、経済界もひっくるめて官、民こぞって反対ののろしを揚げています。
もちろんいきなり完全自由化になったら"こりゃえらいこっちゃ"になってしまいますが、どうも過去数十年にわたって貿易自由化交渉がなされてきてウルグアイラウンド、ドーハラウンド、EPA、FTAと辿って参加しないで済むものであればそれでいいわけだけれども、とうとうここまで来たかといった感が強い中で参加するかしないか、もし参加するとなったらどんな条件で....とこれからどれだけの時間を費やすことになるのか?
TPPについては農業だけでなくすべての商工業、医療や福祉、その他の広範なサービス産業まで含まれるというから大都市から中小のいなかの地方都市、そしてそれこそ純農村まで日本国中にその計り知れない影響は及ぶはずですが今の政府の有様ではどういった姿勢で臨もうとしているのかとんとわかりません。
K総理は6月には話し合いに参加のメドをつけたい意向のようですが、自身がいつまで持つか(2月28日現在)わからない状態で、国の命運を分ける大事なときにそれこそ指針を示すことができないでは、我々国民は右往左往するばかりです。
で、先月100人ほどの中小の農商工業者が全道から参集する催しが札幌で行われたおりにテーマを『今農家だからこそ経営指針を持とう』と銘打って討論する機会を持ちました。
これまで自分の農場の行くべき道を考えてきた10人が10のグループに分かれて、個々の農場の理念について発表し出席者同士で討論します。
時代が刻々と変わり人も政策もどんどん替わってゆく現代において、何を頼りに経営したらいいのか....これは誰にも決められないし結局は自分の判断に帰結する問題です。
常に時代の変遷と向き合いながらも決して"ぶれない"自分(農場)の座標軸を持つことが大きな力となるものと思います。
ちなみにうちのは....
「タカシマファームは家族が楽しく、訪れる人々が楽しく、
そして自らが楽しむ交響"楽"の農場としてお米『田園交響楽』
を通じて、おいしく健やかに食べることの喜びを提供します。
そしてその価値を生み出す田畑は後代からの預かりものとして大切にします。」
としました。
投稿者:taka-farm