コメッセージ 185号 2011年 10月号
っと5m上の籾倉(もみぐら)から下に向かって叫びます。
今年、9月の初めにできたばかりの籾乾燥、調整施設で田から収穫してきたばかりの籾を乾燥機に入れ、ほぼ一日乾燥させ水分15%程度になったところで、今度は乾燥機から籾の貯蔵タンクに移し替えるのですが、何せ初めて使う施設だけになかなか要領がつかめません。
乾燥機Eから出して籾倉5に入れるには、乾燥機Eを排出にセットして昇降機Aの1から6までの6本のひもの1のひもを引いて、籾排出ベルトコンベアを動かし籾搬送チェンコンベアのスイッチを入れて籾倉5の排出口を開ける........っとざっとこんな感じでいきおい冒頭の叫びが出てくるのもむべなるかな....であります。
昨年同様にコンバインで稲刈りをするのは息子の良平で、私はもっぱら運んできた生籾を乾燥機に張り込み、そして仕上がった籾を籾倉に移す役目を担うと言った風に役割分担をしたわけですが、今年こそ乾燥機の台数が2基増えたことと半自動化で籾の処理についてはずいぶんと楽になるはずだったのに、いざふたを開けてみるとなかなかうまくいかないのです。
たぶん不慣れな部分が多いからで、幾分なりとも経験を積めばそのうちもっとスムーズに操作ができるようになると自分では踏んでいたのですが.....わたしの横で同じ操作をするのに極めて手際良く慣れた手つきでやっている息子を見ていると、一概にそうとも言われない部分(老化による思考能力、判断力の低下....?)もあるなと思ってしまいます。
まぁ、運動能力や記憶力、とっさの判断力については若い者に利があるのは至極当然でしょうが、私もダテに30数年この仕事をしてきたわけではありません。
例えば明日降るの雨のことを念頭に今このとき山ほどある仕事の中で何を一番に優先してやるべきか.......〝数多くのまちがいを経験しただけに〟....というような判断力はまだまだあると思っています。
ところで、今年の米の作況は全国的に平年並みとか言っていますが、ここ北海道は105とかで全国一の指数となっており、豊作含みで推移しているようです。
当ファームでもやはり豊作年といわれた昨年と比較してみてほぼ同じか、それ以上の収穫がありそうという気配です。 春先4~5月の異常な低温多雨、7月の極端な小雨干ばつ、そして9月の台風に伴う多雨と決して恵まれた天候ではなかったはずですが、稲の成長において大事な要所々々で天気が良かったからなのでしょう。
例年1割ぐらいはある不稔(ふねん=受精しないで実の入らない籾)が極端に少なく、それだけ収量増に結びついているようです。 今年は東北の大震災を筆頭に日本全国で自然災害の多発した年で、災害に遭われた方々にはたいへん申し訳なく感じるものですが、こうして豊作の喜びを享受できることに無上の喜びを思わずにはいられません。
外にある収穫物が徐々に無くなってくるこの季節ですが、それと期を一にして来年は何をどうやって作ろうかな....なんてことも考えられるわけで、そんな些細なことに幸せを感じられるような心根を大切にしたい。
遠くにコンバインに乗っている息子、良平の姿を眺めながら....あいつはどんな気持ちで収穫作業に臨んでいるのだろうか....と、ふと思いを馳せ、3K(汚い、きつい、危険)ではなく5K(健康、きれい、かっこいい、高収入、休暇)農業ばく進だと言わんばかりの光景にオヤジは勝手に前述の"些細な喜び"を共有できる息子であってほしいと願うのです。
まさに刈り取り中の稲のごとき不稔がなく「実るほど頭を垂れる稲穂かな」のような農業人であってほしい。
投稿者:taka-farm