コメッセージ 187号 2011年 12月号
タンタカタンタカタンタカタ~ン..♪♪...と、
チャペルの中に音楽が流れ、ゆっくりと私と娘が腕を組んで神父さんと新郎の前へ向かってバージンロードを進みます。
そして新郎の前で腕組みを解き、私は彼の手の中に娘の手を取り導き重ね合わせました。
軽く新郎と会釈して私は自分の所定の席に戻り、これで新婦の父親としての努めは終わりです。
11月最後の日曜日、東京都内の某結婚式場で長女の結婚式が行われたときの様子ですが、25年の歳月がこの日をもって一区切りついたと言えばそうなんでしょう。
親としてはホッとするとともに長いようで短かったような歳月だったとつくづく思います。
でもいまさら言うのも何ですが、私は本当に親らしいことをしたんだろうかと考えてしまいます。
子供の時に楽しくいっしょに遊んだという記憶もそんなにないし、勉強も何ができて、何が苦手とか、どんな友達がいて、学校で、そして放課後どんな生活をしているのか....さらには将来なにをしたいのか?....ほとんど娘のことを知らなかったのです。
小学校での運動会と学芸会ぐらいまででしょうか、娘を観に行ったのは。
そんないたらぬ父親の分を十二分にカバーしてくれたのが家内で、今、子供達みんなが母親と通々(つうつう)の仲なのも至極当然といえば当然でしょう。
ですから、披露宴の終わりに決まって出てくる新婦からその両親にあてての感謝の手紙を読む場面で、その口から私に向けてのメッセージが読み上げられたときには思いの外、私のことを受け入れてくれていたのかと本当に感激で、はからずも涙を流してしまいました。 単純な親だなと思われるかも知れませんが、確かに3人の子供のうち長女である彼女を叱った記憶は結構あるのですが、他の2人はほとんどないのです。
ところで今年ももうほんのわずかになってしまいました。
振り返ってみれば日本全体を覆う政治や経済の相も変わらぬ停滞ぶりから来るなんとなくの沈滞ムード、そしてそれにさらに陰を落とす大震災や原発、年金、雇用問題、私はどうしても賛成する気になれないTPP参加交渉入り......等々、どうも負の側面ばかりが気になる年だったように思いますが皆さんはどうでしょうか?
世界を見渡しても人口爆発の中で相も変わらぬ人権侵害と数々の地域紛争、EUの経済危機、温暖化による環境悪化、確実に広がる格差社会.....等々、ほんとにこんなんでいいんだろうか?....と思ってしまいます。
世界中の一人一人は決して心底からの悪意で動いてはいないはずなのに、どこかで狂ってしまっている。
で、タカシマファームではどうだったか、この一年を顧みることにしますと、昨年は私が大病を患ったものの作柄が良くて、それに救われた部分があり"終わり良ければ全て良し"的.な年でしたが、今年は大学を卒業した息子の就農があり、お米の収穫もまぁまぁ、齢80の両親はまずもって健在ですし、末の娘もどうにか就職でき、堤防強化工事で移転の作業場も新しく完成し、終わりに長女の結婚と超多忙の中にも、作物以外での多くの稔りが得られた年となりました。
宝くじの一等が当たったとか、万馬券で一攫千金とか、そんな夢みたいなことではなく、当たり前に送ってきた(と私は思っている)人生のなかで誰しもある、今までこつこつ蒔いてきた種が生長して少しずつ収穫の段階に入ってきた.....そんな感じとして受け止めようと思います。
たぶんこれからも淡々とあるがままの姿勢で臨むつもりです....決して逆らわず、しかし自分というものを見失わないように.... 皆様どうぞ良い年をお迎え下さい。
投稿者:taka-farm