コメッセージ 190号 2012年 03月号
今まで環境とか食糧、衛生、貧困などをテーマとした国際○○年というのは良く聞いたことがあると思いますが、ここに来て今年協同組合年として国連が全世界を対象に啓発していこうというのです。
協同組合というと我々は真っ先に農業協同組合を思い出しますが、皆さんはCOOP生活協同組合でしょうか。
ほかに組合と名のつくものには魚協、昔はどの町にもあった森林組合、中小の同業者で作る何々事業協同組合とか銀行では信用組合、その他保険共済、住宅、福祉、医療など数え上げればきりがないほど様々な"組合"があります。
どれも古くから地域の生活、生産、消費に密接につながり無くてはならないものだったと思います。
そもそもこうした組合は今から200年ぐらいも前の産業革命盛んなイギリスにおいて、ごく一部の大資産家の経営する炭鉱、鉄道、紡績、運輸事業などに大多数の貧困大衆が劣悪な環境で長時間労働を強いられた時代に、自分たちの生活を守り、向上させるため非営利の組織として自然発生的にできたものらしいのです。
今は全世界でなんらかの組合に組合員としてかかわっているのは10数億人にのぼり、その家族も含めると30億人?、世界の人々の約半数がなんらかの形で利用している巨大で平等......な互助組織でもあるということです。
ただ、その一方でますますグローバル化して超巨大マネーが金融市場、株式市場、為替市場などをぐるぐるまわり、一般庶民には全く預かり知らないところでとんでもない損失(とんでもなく儲けているやつもいる)を被る事態が繰り返し起こっています。
老後のための年金を積んでおいたのが委託した投資会社の失敗で雲散霧消してしまったとか、あの光学機器で有名なO社も会社の存亡にかかわる投機による損失隠しがバレて捜査されているといったことがつい最近もありましたね。
リーマンショックの後遺症で世界経済がもたもたしていて、日本もその波をもろにかぶってなかなか立ち直れないとは言っていますが、金が金を生む錬金術?の世界で日本(日本人)はどれだけのものを失ったことか。
グローバル化の功罪は多々あれども、日本の場合はここにきて明らかに有形無形に失った方が大きいと思いますし、世界的にみてもあまりに富が偏在して格差が容認しがたいレベルに達して、人々に不満が渦巻くようになってきました。
ですから国連が行き過ぎた金融バブル資本主義と色あせて過去の遺物とも化した共産主義、一部の過激な宗教などにとって代わる"協同組合主義"ともいうべき理念をもって、これからの世界をリードして新たな世界平和に向けた普遍的な価値観の構築と共有に努めようというアピールの年にすべく、協同組合年として制定したものと思います。
しかし足下の地域農家の経営の要、そして多くの田舎、農村地域の暮らしの支えとしてのJA(総合農協)をみたときに本当に大きな難しい問題に直面しているように見えます。
他の金融機関、生保共済、流通、卸、小売販売会社との激烈な競争、農産物価格の低迷、異業種からの参入、組合員の高齢化と組合離れ........。
これらを乗り切るために組織、事業の効率化待ったなしで合併を繰り返し巨大化する。
で、そうなると地域の農家との結びつきが徐々に弱くなって農協自体の体力がまた低下する.....という悪循環に陥っている。
これだけ個々人の考え、行動、価値観が多様化して物的にも豊かになった中で、組合本来の"平等"の原理原則をどこまで全うできるのか。
かかわる老弱男女すべてが「営利を目的とせず一人一人が"平等の議決権"、"平等の利用権"を持ち,そして出資者であり経営参画者でもある」という立場をきちっと認識して、この難しいときに組合に向き合うことができるであろうか?
投稿者:taka-farm