コメッセージ 204号 2013年 05月号
と息子の良平が言うので、まさかと思い芽出し器に入れてある種籾をチェックしてみると、確かにまだ6時間ほどしか経っていないのにもう白い芽がプチプチっと切っています。
皆さんは「赤毛」という稲の品種を知っていますか?
「赤毛」は今から140年前、明治6年、現在の北広島市島松沢で中山久蔵という方が北海道の道央地区以北(函館周辺の道南では江戸時代より作られていたようです)で初めて稲作に成功した品種で、北海道の農業試験場で保存されている稲の品種の番号も1番に登録されているものです。
当時、稲作は役所の支援など一切なく、彼の艱難は想像に難くないわけですが、米を食べたい、作りたいという情熱でとうとう赤毛を実らせたのでした。
彼が現在の日本でも有数の主産地である北海道の稲作の様子を見た時、いったいどのような感慨を抱くことでしょう。
そんな由緒ある我が町の米作りの歴史で、数十年前からS氏という篤農家により、赤毛種の復活作付け保存がなされ、そのあとまた別のS氏がそれを受け継いで少ない面積ながら今に続いているのです。
たまたま今年が赤毛誕生から140年の節目ということもあり、市や商工会が記念の事業を企画しており、赤毛をモチーフに着ぐるみの「きたひろマイピー」ちゃんを作ったりして町興しの一翼を担うことになって、赤毛を少しでも増やしたいというなか、私の農場にも作付けの依頼があったというわけで、冒頭のような出芽の話になった次第です。
ただもちろん特別貴重な種ですからわずかしかありませんし、また現在の機械播種、田植機、コンバイン収穫、機械乾燥調整の作業体系とは相容れない品種ということと、収量が少なく、今の「ゆめぴりか」と同じような作り方だと倒伏してしまうとのことで、まず作付面積はおのずと限られてしまいそうです。
ところで北電は電気料を値上げすると言い出しましたね。
原発再稼働の見込みがなく、火発の燃料代がかさむそうですが、短期的にはそうかもしれませんが今後数十年というスパンでみれば福島原発の不始末の有様をみるにつけ再稼働なんてあり得ないし、人として倫理の上からも決して容認できるものではありません。
再稼働して行き場のないゴミを増やし続けるのか、自然からエネルギーをいただく道を目指すのか、答えは明白だと思います。
人は食べるためどれほどの歳月、心血を注いだことか....それを一瞬にして無にする危険性をはらむ原発はやはりいらないでしょう。
赤毛140年というと高嶋家が入植してから116年ですからそのずっと先で、原野を開拓して畑や田に変え食べ物の生産にどれほどの苦労があったものか.....私は現在農業用水、排水、農道、土地改良事業などを手がける土地改良区の地区役員をやっていますが、その維持補修の困難さを痛感しており、同時にそこかしこに残る古い用水記念碑や住宅地の中にうち捨てられたようにある水関連施設の名残、増え続ける遊休農地等を見るにつけ先人達に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
投稿者:taka-farm