コメッセージ333号 2024年2月号
今年は年明け早々、しかもまさに1月1日からとんでもない災厄が起こってしまいました。
午後4時半頃でしょうか、私と家内二人で毎年恒例の初詣に行って今年の安寧をお祈りし自宅に戻ってテレビを入れた途端、石川県能登地方を震度7の地震が襲い日本海沿いに大津波警報が出されたということで、アナウンサーがほぼ絶叫に近い状態で避難を呼びかけています。
どのチャンネルを回しても日本海側が赤く点滅し「早く避難して!...命を守る行動を今すぐに!....早く逃げてください!....」の連呼で、まさにお正月気分が吹っ飛んでしまいました。
能登といえば私の脳裏にはすぐに輪島市の「朝市」と「千枚田」が浮かんできます。
どちらも古くからの歴史があり有名な文化遺産ともなっていますが、朝市の方は地震直後の火災で全滅状態に、そして千枚田は今のところ報道もほとんどないので判然とはしていません。
映像で見る限り日本海沿いの国道はあちこちで崩落した土砂で埋まり不通になっています。
ということは日本海にせり出した山をせっせと開墾して等高線に沿った形でくねくねと曲がった畦を造って小さな田を何十、何百枚と整備してできた棚田も同様に崩壊した可能性があります。
何百年という気の遠くなる年月をかけ築き維持してきた山間地の棚田が無くなってしまう?...。
以前はその非効率故の生産性の低さから後継者もおらず全国的に耕作放棄地の先駆けになっていましたが、近年輪島のように一部で町興しの一環として工夫し、都会の人々を呼び込むような仕掛けを施しているところが見受けられるようにもなりました。
維持管理するのに出資を募って田植え、稲刈り体験にも来てもらい収穫したお米で配当したり、春夏秋冬、昼夜、四季の移ろいの見事な景観を畦道に植えた草花や設置したLEDライトで鮮やかに映し出したりと.....バックの青々とした海、夕日との対比がなんとも言えず美しい。
私が物心ついて60年ほどの間にいったいどれほどの地震があっただろうか。
阪神・淡路大震災、東日本大震災などの巨大地震、熊本や胆振東部などあまたの地域地震がこれまで幾度となく起こり、その人的、物的、心理的被害たるや想像を絶するものがあります。
しかし大都市や地方の中核都市などはその都度、建物、道路、社会インフラなど、程度の差こそあれ時が経てば復旧し災害の痕跡もなかなか見いだせなくなってしまうほどです。
それも多くの次代を担う青壮年の働き場所があって経済的に恵まれてるからでしょうが、地方の農山漁村では今回の能登と同じように高齢者の割合が著しく高く、新しく生活の基盤を築くことが困難で集落単位の地域の維持すら難しくその存続は風前の灯火となっています。
同じ石川県でも能登半島の付け根にある羽咋市は被害が少なかったようですが、ここには遠くバチカンのローマ教皇に献上したお米を作ったことで有名(一部のお米生産者と町興し関係者だけかも....)な「神子原(みこはら)」地区があり、そこは棚田のある典型的な過疎集落でした。
しかし神子原=神(キリスト)に仕える子=ローマ法王....こじつけでもカトリックで世界の頂点の人に神子原のお米を食べていただこうと頑張りそれが実現した時には、教皇様が食べられた最高品質米ということでとんでもなく付加価値が上がり地域興しの起爆剤になりました。 復興の道筋は険しいけれど磨けば輝く宝物を創ろうという心は持ち続けて欲しいですね。
投稿者:高嶋浩一