コメッセージ 111号
今年も昨年に続いて市内の小学4年生の見学を受け入れていた時で、みんなわいわいがやがやとはしゃぎまわっている中でのことでしたが、その言葉を聞いてとっても嬉しくなりました。
田の緑の広がりや、心地よい風、水面にはアイガモ君達が泳いでいます・・・・・そんな風景を目の当たりにした時に彼の心に何かが働きかけてとっさに出てきたのでしょう。
その子は別に深い意味も、特段の考えもなくストレートに自分の思ったままを発したのでしょうけれど、それだけに私の心には強烈に響いているのです。
こうしたちっちゃくて純粋な感性を少しでも受け止めて育てていけたら農業の後継者不足もいくらか緩和されるかも・・・・ともあとになって思われたのですが、はてさて、現実はそんなに甘いものではないのです。
何の経験もない非農家の子弟がお米を作る農家になるには、まずそれなりの学校(農業高校、大学など)に通ったり指導農業士などの優秀な農家に長期実習に入って経験を積むこと、まずこれが大前提になりますが、これだけでは農業者として認められません。
農業者としてのお墨付き(公的機関の就農認定)を得るためには数年、およそ少なくても3~4年の勉強と経験のさらなる積み上げが必要となるでしょう。
それからやっと農地を購入して一人前の農家となれるはずなのですがところがどっこい、稲作経営で食べていくには「国が選別しつつ育てていこうとしている担い手農業者」になれる規模・・・・やっぱり10ha以上、いやもっと・・・・いや、いくらあってもダメかな・・・購入するにはまず数千万円は必要ですし、もちろん機械、施設なども揃えなければならないのでさらに負担は増えます。
借地や中古機械でやってゆくこともできますが、譲る側は離農を考えているわけですから何としても買って欲しいわけですよね。
それで地域で農協や自治体が出資して農地の流動化を促進するために農業振興公社等を設立して売買の仲介(公社が離農希望者から農地を買い取り担い手農家に一定期間リースし、力が付いた頃買い取りをしてもらう方法)をしていますが、売り手ばかりで買い手が極端に少ない状態で遅々として、その結果が見えてこないというのが実情です。
結局、今の生産者米価では農地を増やしてまで田んぼを作ろうなんて人は皆無で、先の4年生の子が自分の将来を考える10年後ぐらいには農業政策や、農地法がダイナミックに変わって新規就農者がどんどん入ってくるようなことにならいかないかぎり日本の稲作の未来はないなぁ・・・・・・・・ つまり農業は世襲が一般的というのではなくて”やる気のあるヤツ”がやるべきということです。
私は北海道に渡って5代目の跡継ぎで、前述の苦労をせずにごくあたりまえのように親の農地を受け継いで(父からは借地)やってこれたから良かった?
けれど様々な知識、知恵、工夫を駆使することを要求される現代農業にあっては外からの新しい血・・・・・やる気のあるヤツを参入しやすくしてやること、まずこれを考えるべきでしょう・・・ ただし、”やる気のあるヤツ”の中に法人(株式会社等)をも含めるかどうかはまた別の問題ですが。
しかしこのやる気のあるヤツの見極めが難しいですね。
バブル真っ盛りの頃、私のすぐ隣の農家が道南地域でとりあえず農業者としての「権利」のある小売業者に所有農地を売却することになり、農業委員会が営農計画書を提出させたりして許可したのですが、10数年経過した現在、その農地はすっかり荒れ果て一部は不要物(ゴミ)置き場になってしまいました。
このことについてだ~れも責任をとらないし、用排水路を共用している私たち地域の農業者は困るし、さぞかし地の底では幾多の開拓者達が現代の愚か者達の愚行を嘆いて(あざけり笑って)いることでしょう。
投稿者:taka-farm