コメッセージ 169号 2010年 06月号
「おい、良平!、今日からお前が乗れや」
と、早朝、田んぼの田植え機を前に息子に言います。
息子はこれまで田植えの補助作業はしていたものの機械の運転は全くの初めてで「え!いいのかぁ....」というような顔つきをしながらも運転席につきました。
このレバーを押すと動くからなとあれこれ機能を説明したあと、いよいよ運転開始です。
初めはぎこちなかった操作も徐々に慣れ、一時間もしないうちにまずまずの動きになってきました。
まだ学生ですが今年は田植えの期間中、いくらか手伝えるということで、それならいっそのこと機械に乗ってもらった方が私にとっては好都合だったのです。
以前にも書いたと思いますが、田植えはチームワークでするもので、機械と運転手だけでできるものではありません。
苗をハウスから運ぶ人、その苗を運転手に渡す人、植え終わった田で機械が植えることのできない四隅や欠株(けっかぶ)のところに補植(ほしょく)をする人....これらの人々の連携プレーで田植えは進行するのです。
で私は何をするかというと現場の総監督(なんでも屋)みたいなもので、例えば次に植える田んぼの水の落ち具合(田に水が多すぎても少なすぎてもうまく田植えができない)を確認したり、品種の変わり目にあたっては残っている苗で予定の面積が植えられるかどうか判断したり、代かきのときに畦ぎわにたまった稲わらや根株などのゴミの取り残しを再度取り除いたり、植え終わって空になった育苗箱を回収して所定の格納場所に納める....というようなことをするわけです。
つまり私がフリーで歩けるということが田植えをよりスムーズに進行させることにもつながるということにもなります。 そういう意味では息子の田植機運転は単に私の肉体的疲労の軽減だけでなく、多少大げさな言い回しをお許しいただければタカシマファームでの田植作業のシステム化につながってゆくものと思います。
ところで今年82歳になった私の父から聞いた話ですが、父は高等科(現代でいう中学生?)のころ、よく私の祖父(故人)から農繁期になると「おぅ、坊ゃ、今日学校休め!」と言われ学校を休んでは仕事を手伝わされたようです。
これってもちろん無償ですし、今では立派な児童虐待?で訴えられますよね。
昔の農家は大家族でまさに貧乏の子だくさんを地でいったようなところもあり、子供も立派な働き手として重宝されたのでしょうが、それにしても簡単なものですわ。
絶対的な親の命令には抗うことなどもってのほかで、「おい、頭きれいにしてこい」と言われて床屋に行くと翌日はお見合いだった....というのだから恐れ入ります。
もっとも、そのときの相手の女性が私の母であるわけですから 、まっ、結果オーライということで良しとしましょう。
で、現代の我が家では「お~い、良平や、25日から田植え始めるんだけどもどれだけ手伝えそうだ?」という私に、何日と何日とは午前中大学に用事があるし、何日は晩に友人らと飲み会があって5時には出て行かないと間に合わないし、○日は一日中ダメだからという返事。
「お~い、せめて○日は何とかならんのか、学校一日ぐらいサボったっていいべや~」 ....と心のなかで思いつつ、ぐっとこらえてなんの当てもないのに「そうか、じゃ仕方がないな、俺の運転で誰かひとり苗取り補助作業員をめっけなきゃ」と言ってしまう。
あ~ぁ、これでまた社長としての余計な仕事ができてしまったではないか。
......という顛末があったなかでの冒頭の田植機の運転の話にはなるわけですが、ほぼ8割方息子に乗ってもらい先月31日に無事田植えが終了しました。
そして机の上にはしっかりと息子からのアルバイト代の請求書も置かれています。(-_-;)
投稿者:taka-farm